法定相続で配分比率が決まっていても、相続人間の話し合いで決まれば、それが優先されます。例えば亡父の遺産を「すべて母親に」と子供達が了解すればそれで終了です。ところが遺産相続で「骨肉の争い」となるのが、兄弟同士なのです。親はいつまでたっても「子供は子供で、小さい頃から仲が良い」と思っていることが多いので、何も言い残さず亡くなることがほとんどです。
姉妹に比べて男兄弟は、結婚すると「嫁の言いなり」になる人が圧倒的に多いです。嫁に尻を叩かれて長男の威厳を取り戻そうと張り切るあまり、話合いがモメることはざらです。
戦前までは「家督相続」といって長男が全財産を独り占めしていました。信じられないことですが、いまだにそんなことを言う人がいます。現在の法律では 嫁に行っても、養子に行っても、子供はすべて平等に相続する権利を持っています。困ったものです。
交通事故等ですでに兄弟が死亡している場合でも、子供がいれば(亡くなった親からすれば孫にあたる)相続する権利があります。 遺産相続人は誰?を参照下さい。
亡くなるまで親の介護を一手に引受けて来たので、遺産を多くもらって当然―ということを主張して話合いがまとまらない場合があります。その後 調停、裁判になっても、裁判所の判断は『子供は親の介護をして当然』という立場で、介護で貢献したことが認められた場合でもその割合は遺産全体の10%以下と低いのが現状です。
認知症になると ①遺産分割協議書に押印することも ②遺言を作成することもできません。
相続割合が少ない内容が書かれた遺言が無効だと主張する兄弟も多いです。これは「自筆証書遺言」の場合が圧倒的に多く、裁判に持ち込まれて長年にわたって争われることもあります。
長男夫婦と同居している親が、亡くなる前に遺言書を作成していた場合、長男に遺産を多く配分するのは自然なことに思えますが、遠く離れて住んでいる次男にはそうは思えません。「(長男に有利な内容を書くように) おやじに無理やり強要したから遺言書は無効」と主張して、これも裁判に持ち込まれて長年にわたって争われることがあるのです。
元は仲の良かった兄弟でも、結婚して所帯を持ち遠く離れて住んでいれば疎遠になるもの。近くに住んでいて付き合いがあればまだしも「どうして二人で築いた財産を相続させなければならないの?」というのが自然です。
対策はただ一つ:『全財産を妻の○○に相続させるという内容の遺言書を夫に書いてもらう』ことです。
これで夫の兄弟は遺産相続を要求できません ⇒ 遺留分へ
遺産相続を契機に「兄弟の縁が切れてしまった」という話をこれまで多く見聞きしています。